『フライの雑誌第44号』の内容の一部

特集◎あらためて、キャッチ・アンド・リリースを考える
日本の(釣り場管理方法としての)キャッチ・アンド・リリースは、どのようにすすめられるべきなのか。

 ここ二、三年のうちに、フライフィッシャーの地道な活動によって、全国いくつかの釣り場(北海道の渚滑川、山形県の月光川、寒河江川などの一部区間)で、釣り場管理のひとつの方法としての「キャッチ・アンド・リリース導入」が宣言された。
 情報収集に時間をかけてピンポイント的な穴場を聞きださないかぎり今の日本の多くの地域では釣りらしい釣りは成立しづらくなってきており、多くの釣り人がどこへ行っても「釣れない、魚がいない」という慢性的な失望感を味わっていることからすれば、この「キャッチ・アンド・リリース導入」は注目すべきことだろう。
 そして、このキャッチ・アンド・リリースをめぐる現在の流れは、今後わが国の釣り場のあり方を探るうえでも注目すべきことであることはまちがいない。が、これで日本にもアメリカなみの釣り場ができるかというと、残念ながらそう簡単にいかないのである。これまでのわが国には、アメリカのような「キャッチ・アンド・リリース導入」という苗があたりまえに育つ「土壌」が用意されていないのである。
アメリカには、州政府が魚族の調査研究や釣り場運営マネジメントを行い、釣り人へサービスし、釣り人はボランティアでそれに協力してきているという「土壌」がある。これに対して現在の日本の「キャッチ・アンド・リリース導入」は、荒れ地に過大な期待をかけられたかよわい「苗」が植えられたような状況なのである。
 では、ここまできて、ここから先どうなるか、これから先をどうするか…を考えるための話題提供として五人の方々に登場いただいた。(編集部)

1998年冬、クロロプレーン・ウエーダー・カタログ

アングラーズハウス、イナガキ、ケン・インターナショナル、ZAP(Pazdesign)、GMGサービス、ダイワ精工、ティムコ、モンベル、リスコフィールド、Rivalley

スタンダード・フライ・タイイング図説(15)特別編
新素材「シー・ファイバー」とエンリコ・パグラシ
備前 貢

 エンリコ・パグラシ。日本ではまったくと言っていいほど知られていない人物ですが、アメリカのソルトウォーター・シーンでは、若き個性派タイヤーとして一部で非常に注目を集めている人物です。
 もともとは、ニューヨーク州ロングアイランドのリトル・ネックという小さな街でプロショップを経営し、そこで自身のオリジナル・パターンやマテリアルを開発して販売していました。
 しかしその後、タイヤー業に専念するために店をたたみ、同じくニューヨーク州のベスペイジでLPフライ・カンパニーを旗揚げし、現在はそこを拠点に活動しているようです。
 アメリカ東部のストライパーやブルー・フィッシュ、コスタリカのビルフッシュなどなど、それらを釣るためにソルトウォーター・フィッシング専門の彼が開発したものはいろいろあります。例えばエポキシ系の接着剤を使ったフライを均一に乾燥させるための低速モーター(エポキシを塗ったフライを数本まとめて回転させることができる)や、なんと一分間で硬化がはじまるエポキシなどなど。その筋のフライタイヤーが唸ってしまうようなものがあります。しかし、何をさておき彼を一躍ソルトウォーター・シーンの新旗手として有名にしたのは「シー・ファイバー」という化学繊維からつくったマテリアルと、それを使った独自のタイイング方法でしょう。

ブラウンの跳ねるダム湖にて 備前 貢

 どのくらい眠り込んだのか、ふと気づくと、自分の周囲の光景が一変していた。いつの間にか風はピタリと止まっていた。流されるまま寝ていたので、湖岸に吹き寄せられていたぼくは、同じように流されて来た多量の流木の真っ只中に閉じ込められていたのだ。「クラスター状態やがな…」 脱出しようと、ジタバタもがいているうちになんだかワケもなくさびしく切なくなって、「さびしいやんけ、オイ。どないしてくれんねん…」 大声でどなってみる。行く手を阻む流木のジュウタンは、まだまだ続いている。物音ひとつなくなった湖面に、動いているのはぼくひとりだけだった。

1998秋、二人のイエローストーン 釣りの楽しみとは何か
木住野 勇 樋渡忠一

 日本のフライフィッシャーがいう「イエローストーン」とは、アメリカのイエローストーン国立公園そのものだけではない。広大な国立公園とその周辺エリアをも含めた一帯のことである。そして、そこにはマジソン川、ファイヤーホール川、ヘンリーズフォーク川などをはじめとする数々の著名河川がひしめき合っており、アメリカのフライフィッシャーにとっても憧れの釣り場である。一九九八年の秋、そのイエローストーンに、本誌にもたびたび登場してくれているキシノさんとヒワタリさんのお二人が出かけた。これまで本誌上で、釣り場周辺に生えている植物でフライを巻いて釣ったり、総額二、〇〇〇円のフライフィッシング・タックルを自作して釣ったり、ちょっと変わった遊び方を実践してくれている、あのキシノさんとヒワタリさんである。
 これは、初めてイエローストーンへ出かけたお二人の経過報告のようなものである。