創刊30周年を迎えることができました。

下の写真のTシャツは、1997年に〈フライの雑誌-創刊10周年〉で作りました。備前貢さんのところで見て、なつかしくなりました。とうぜんわたしも未開封品で持っています。仕事机から二番目に近い戸棚にしまってあり、時々引っ張り出して眺めてまたしまいます。

使われているイラストは、斉藤ユキオさんの描きおろしです。中沢編集長の指示で、知り合いのTシャツ屋さんに頼んでわたしが作ってもらいました。とにかく頑丈にしたかったので、当時のもっともハイグレードな仕様にしました。たしか白を100着、グレーを100着作ったのですが、備前さんのところに10着も行っていたとは知りませんでした。

10周年記念パーティもやりました。柄にもなく、急にパーティーをやりたくなったらしい中沢さんが、くるっとこっち向いて「ホリウチくん、お願いできる?」と言ったので、わたしは「任せてください!」と胸を張りました。そこは広告会社でアルバイトをしながら『フライの雑誌』の編集に関わっていたわたしの出番です。

招待状は中沢さんが作って発送しました。『水生昆虫アルバム』が大ベストセラーになり、フライの雑誌が一躍、大注目されていた頃です。色々と余計な横やりが入るんだよ、と中沢さんから聞いていたわたしは、(仙川なめんなよ)と発奮しました。新宿の京王プラザホテルにお願いして、華やかな宴会場と豪華な食事を用意し、でっかい横看板をデザインしてぶらさげました。それはそれは費用がかかりましたが、中沢さんからはなにも言われませんでした。余裕があったのでしょう。いいなあ。

パーティーのタイトルは、〈『フライの雑誌』創刊10周年 「フライフィッシングの一年」「水生昆虫アルバム」出版記念 フライの雑誌 寄稿者の集い〉です。タイトルが長いのは中沢さんの好みでフライの雑誌の伝統です。

大勢のお客さんが来てくださいました。今でもお付き合いのある方もいれば、ない方もいらっしゃいます。残念なことに亡くなってしまった方もいます。当日の進行予定表はわたしがきっちり用意していましたが、ふたを開けてみれば、中沢さんにぐちゃぐちゃにされました。色んな方が次々に登壇してくださり、パーティーはすばらしく楽しいものになりました。

パーティーがお開きになって、残ってくれた方で二次会へ行こう!と盛り上がりました。その時になって二次会の会場を押えていなかったことに気づきました。こういうところの詰めが昔からわたしは甘い。西新宿の街区を駆け回り、奇跡的に席のあるお店を見つけられ、皆さんにテーブルに着いてもらうことができました。お客さんを送り出してすべてが終わった後、中沢さんに「ありがとね。」と言ってもらって、鼻が高かったことを覚えています。それが今から20年前です。

『フライの雑誌』は、なんと今年の5月10日で創刊30周年を迎えました。こんなちっぽけな出版社が、年々きびしさを増し激動する社会のなかで、30年間も仕事をさせていただいているのは、ひとえに本を購入してくださる読者の皆さま、支えてくださる関係者の皆さまのおかげです。

本当にありがとうございます。

創刊30周年では、パーティーみたいな賑やかなことはできませんが、これからもまじめに仕事をして皆さんに喜んでいただくことで、恩返しをしていきます。

どうぞ今後ともよろしくお願いします。

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フライの雑誌社 編集発行人 堀内正徳

ここまで来たら封ひらけないなあ
10周年パーティーの唯一残っている写真。この日、生の島崎憲司郎さんを初めて見た。
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『水生昆虫アルバム  A FLY FISHER’S VIEW』 島崎憲司郎(文・写真・イラスト) 1997年初版、2000年第2版2刷、2005年に新装版。フライフィッシングの世界観を変えた古典