「スポーツの為に釣っては放す行為は、命をもてあそんでいるような気がしてならない。」それでもそんな釣りをしないと生きていけない人も、世の中にはいる。

尊敬する登山家の野口健さんが、東京都知事選でも小池百合子さんを応援しているご様子だ。ご本人の書いた過去記事を引いて、「小池百合子さんを応援するわけ」を表明されている。そこで環境大臣時の小池百合子さんのブラックバス絡みでの所業を称賛している。かつ、スポーツフィッシング(というのもつまらない言葉だが)をする釣り人へ向けて、残念なレベルのことを仰っている。反論して記録しておきたい。

アルピニスト 野口健のブログ

小池百合子さんを応援するわけ
(2009年08月27日)

環境仲間 小池百合子さんの取り組み

ブラックバス規制では、日本固有の生態系を守るため〇五年に施行された「特定外来生物被害防止法案」の規制対象リストにオオクチバスを含めることに対し、釣り具メーカーやその関連団体から支援されている政治家や審議会の委員らが強く抵抗し、「オオクチバスの規制よりも開発汚染や生活用水による汚染を先に解決しろ」と小池さんに迫った。しかし小池さんは「それとこれは別問題であり、結論の先送りでしかない。法の趣旨から考えても指定すべき」と決断し、オオクチバスを規制リストに入れた。

 その結果、反対団体から小池さんの事務所宛てに数千通に及ぶ抗議のファックスが連日届いた。それでも小池さんは「私は環境大臣として当然の決断をしただけ」と一切怯まなかった。オオクチバスの問題は調べれば調べるだけ裏でドロドロとした利権がからんでいることが分かる。それだけに今までの責任者たちは手を下そうとしなかったが、小池さんは違った。

 そもそも釣りをして魚を捕るという行為はお魚の命を頂いて感謝しながら食べる。つまり生を繋いでいく為だが、しかし、スポーツの為に釣っては放す行為は、命をもてあそんでいるような気がしてならない。これは私特有の屁理屈に過ぎないのだろうか。

まず第一に、「オオクチバスの問題は調べれば調べるだけ裏でドロドロとした利権がからんでいることが分かる。」について。

バス叩きで利権を得る(得た)のは、全国内水面漁業組合連合会(全内漁連)です。全内漁連は自民党の支援団体です。つまり、特定外来生物法に関連する「ドロドロとした利権」へ政治的に乗っかったのは、小池百合子さんです。

野口さんの仰る「日本固有の生態系」とは何か、そこにオオクチバスがどのように関わるのかといった、基本的な議論を無視して法律が決められたことが、一番の問題です。民主主義をふみにじったのは小池百合子さんです。

第二に、「スポーツの為に釣っては放す行為は、命をもてあそんでいるような気がしてならない。」について。

その通りですよ。魚を釣って殺そうが放そうが、釣りとはそういう遊びです。魚にとっては迷惑だし残酷です。社会にはまずなんの役にも立ちません。それでも、そんな釣りをしないと生きていけない人も、世の中にはいるということです。

あなたが山に登るのと同じです

色んな出自・趣味・嗜好・性癖・思想・宗教を持った人間が、互いに尊重し価値を認めあって共存できる社会が、暮らしやすい社会だと思いませんか。小池百合子さんが都政で提唱しているダイバーシティ(多様性)とは本来そういうものでしょう。

もっとも小池百合子さんは、ダイバーシティ(diversity)を、ダイバー・シティ(diver city? なんのこっちゃ? お台場?)と勘違いされているご様子です。小池百合子さんにとっての多様性ある社会とは、ご自身にとって都合のいいものだけが生き残っている焼け野原みたいな社会かもしれません。

・・・

浅い知識と半端な思考の門外漢が、専門外のジャンルについて発言するのは危うい。本人が騙されているのは勝手だが、騙されたままものを喋ると、結果的に他人を騙す。

野口健さんのこれまでのしごとには共鳴するし、行動力は尊敬している。だが野口さんがブラックバス云々について発言するなら、釣りの現場に足を運んで、見聞を深めて、ご自分の肌身にもとづいて発言してくれていたらよかった。

よく知りもしないことに口を挟むと自分の価値を落とす。上っ面だけなぞって人々を煽るのでは、それこそ政治家と変わらない。恥ずかしい行為だ。

・・・

それにしても、こっちの生きがいにしてる趣味について、他人様からどうこうケチつけられる筋合いはない。まったく大きなお世話だ。

↑ ほんとはこれを一番言いたかっただけみたい。

(堀内正徳)

魔魚狩り ブラックバスはなぜ殺されるのか 水口憲哉(著)|ブラックバスは、濡れ衣だ! 異色のベストセラー
魔魚狩り ブラックバスはなぜ殺されるのか 水口憲哉(著)|ブラックバスは、濡れ衣だ! 異色のベストセラー
『淡水魚の放射能 川と湖の魚たちにいま何が起きているのか』(水口憲哉=著/フライの雑誌社刊)
『淡水魚の放射能 川と湖の魚たちにいま何が起きているのか』(水口憲哉=著/フライの雑誌社刊)

『葛西善蔵と釣りがしたい』(2013年5月16日発行)
『葛西善蔵と釣りがしたい』堀内正徳(2013)