公開座談会『(フライ界の)明日はどっちだ?』

 去る2月4日(日)、山梨県都留市の「FISH-ON!鹿留」で、『新春フライタックル合同説明会』という催しが行われた。独立系のフライフィッシングメーカー各社が推薦タックルを持ち寄り、来場者に現地で実際に手にとって確かめてもらうというもの。この説明会に引き続き、同会場で当日参加メーカー+来場者による公開座談会『(フライ界の)明日はどっちだ?』が開かれた。
 主催者からの事前案内は次の通り。
「フライブームも遠く去り、慢性的釣り場不足問題も未解決のまま、少子高齢化・格差時代に巻き込まれていくフライ界。とりわけても今回参加の小規模メーカーは、当然ながら世間並みにタイヘンだったりする、らしい…。てなわけで、日頃は釣りば〜っかりやってるフライ業界関係者が、輝かしいと信じてる未来のフライフィッシング&それに至る道程を語る。」(webサイトより)
 当日は業界以外の一般釣り人の参加もあった。集まったメーカー各社の中には今回が初顔合わせの方々もあり、座談会がどのように展開するかは、まったく事前の予測がつかなかった。『フライの雑誌』編集部ではこの公開座談会の様子を録音してきたので、以下にご紹介する。

メーカー参加者(敬称略)
杉坂隆久氏(TSR)
清水一郎氏(クレオール)
岡田裕師氏(O−Rex)
杉浦雄三氏(TEAL)
久野康弘氏(アクアビット)司会進行


フライフィッシング・スクールを開く目論見と実情

要はうちを知ってほしいのが一番の狙いです。(杉坂)
お客様のニーズにふさわしいクオリティを提供できるかどうか。(清水)

久野 皆様、今日はお集まりいただいて本当にありがとうございました。今日のメンバーは、仕事としてフライフィッシングをやっている方、趣味としてやっている方、お店をやっている方、以前やっていた方、業界以外の釣り師の方、いろいろな立場の方がいらっしゃいます。で、これからもフライフィッシングをもっと楽しんでいくために、何か言いたいことがある、もっとこうしてほしい、あなたのところでやっているこんなことが気にくわない、など自由に語っていただいて、前向きな形で明日の明るいフライフィッシングを考えようではないかという集まりです。知った顔ばかりなのでやりづらいこともあろうかとも思いますが、思い切ってやりましょう。
清水 いっそこの場でケリをつけてもいいわけでしょう(笑)。
久野 そうしたい方はもちろんジャンジャンやってください。(笑)。では最初に杉浦さん。
杉浦 はい。
久野 ちょっと前の『フライの雑誌』の座談会(2005年2月/第68号)で、これからはもっと若い方たちにフライフィッシングをやっていただきたい、ということをおっしゃっていました。大勢の若い方が中心に動いていくのが、未来のマーケットを考えると健全であるはずだ、という大意だったと思います。あの座談会で杉浦さんは、フライフィッシングを普及させたいために、無報酬でスクールを開催しているとおっしゃっていました。そのことについて伺います。スクールはどれくらいの頻度で開かれているんですか。
杉浦 スクールと釣りのツアーを合わせて、だいたい月に1本です。
久野 月に1本とは大変なことです。杉坂さんもノーギャラでショップを回ってテクニックや楽しみ方を広めることで、結果としてフライフィッシングが盛んになりフライフィッシング業界も発展していけば、とおっしゃっていましたね。
杉坂 ぼくのメーカーは新参なので、竿を実際に振ってもらって大勢の人に知ってもらいたい、という単純な理由です。ミニスクールの形態になりますね。うちの商品を知っていただくことが狙いです。
久野 月にどれくらいの頻度ですか。
杉坂 3回くらいかな。清水一郎さんのお店は有料のスクールをたくさん開いていらっしゃいますね。
清水 国内外を合わせれば、月に3回から4回は開いています。スクール内容の質はもちろんお客様のご判断ですが、日数、量はかなりのボリュームだと思っています。渓流のスクールは水・木・金・土・日曜と続けて開いたりもします。今年3月には、高原川で月初めに3、4日、その次の週に芦ノ湖で3、4日と続きます。お客様が順繰りに入れ替わっていただく。ぼくはその間ずっと釣り場に居続けです。
久野 ひんぱんに有料スクールを開いているのに、それだけお客様が集まって営業的に成り立つのは、このご時世ですごいことだと思うのですが。
清水 ありがとうございます。
久野 他にもたくさんスクールが開かれているなかで、お客様はどういった部分で清水さんのスクールをご選択されているとお考えですか?
清水 そういうことであれば、まずはじめに、スクールのクオリティ、特にフライフィッシングの技術のクォリティについて私には意見があります。いまはスクールも百花繚乱です。業者がやるスクール以外に、アマチュアの方がボランティアでやってるスクールもある。業者・アマチュア双方とも、質を向上させて行くべきだと思うんです。そうすればお客さんが何を欲しているか見えてくる。その意味では、互いに情報交換や意見交換をすることにより、お客様の求めるニーズが分かるから、今日のような集まりは有意義だと思います。
久野 個人的な経験を語らせていただくと、私はキャスティングに関して、2カ所でレッスンを受けています。結果から言うと、どっちも本当にためになりました。スクールを受けたことで釣り技術が向上して釣り自体が楽しくなったことはもちろん、道具選びも自分の目でできるようになったし、当時感じてたフライフィッシングやショップの敷居の高さも感じなくなった。いい「買い物」でした。今日お集まりいただいたなかで、スクールを受けた経験がある方はいらっしゃいますか。
杉浦 5、6年前になると思いますが、今日もいらしている岡田さんのスペイキャスティングスクールを受けました。あのころ私は初めてスペイをやったんだけど、本当に受けて良かったなと思っています。うちでロッドを買ってくださったお客様には、岡田さんのスクールをお奨めしてるくらいなんです。
久野 岡田さんはどれくらいの頻度でスクールを開催しているんですか。
岡田 ショップさんに呼んでいただく催しとして月に2、3回。あとは個人のレッスンです。種目としては、ここ数年スペイキャスティングの依頼が増えています。
久野 受講されるのは、どれくらいのキャリアの方が多いですか。
岡田 スペイを始めて1、2年くらいまででしょうか。フライフィッシング全体のキャリアで言うと、5、6年。10年という方も中にはいらっしゃいますが、10年、20年とフライフィッシングの経験を経たベテランさんだと「今さらスペイを覚えるなんて」という方も中にはいらっしゃいますね。
杉坂 スペイについては私もレッスンを受けました。フライフィッシングを何10年もやってきているわけだけど、スペイは最初、ぜんぜんうまくいかなかったんだよ。
会場から キャリアを積めば積むほど、改めて他人様に教わるのは、勇気いるよね。
杉坂 まあおれはそういうこと、あんまり気にしないタチだしね。ただ単純に、スペイキャスティングは釣りに有利だなと思ったから素直に教わって、練習したらいつのまにかスペイにはまりまくって、こうなっちゃった、というだけ。


腕があっても釣り場がない。釣り人と地域との関係

メーカーの方、業者の方、ショップの方は釣り場環境に対して何かをやっていますか。(会場から)
地域の人に受け入れられれば、フライをやっていても楽しい。(杉浦)

会場から スクール自体あったほうがいいのかどうかという問題もあると思うんですが、スクールとはつまり、メソッドを広めて人を増やすという機構ですよね。でも今のフライフィッシングというか釣り業界が抱える問題は、もっと根本的なところにあるんじゃないかと思うんです。釣り技術がうまくなればなるほど、釣り場には魚がいないと感じることが、とくに関東ではものすごく多いと思う。ツーハンドロッドのキャスティングを覚えたけどそれで何を釣るんだ、釣れてもこんな小さなヤマメじゃないか、と。そう感じて釣りに行かなくなった人もたくさんいるでしょう。それに月々の小遣いがきまっているなかで、携帯電話やゲーム、パソコンとお金がとられていって、釣りに回すお金が少なくなっていくという流れもある。そういった状況に対して、釣り業界の方は何かをしているかというと、何もしていないと思うんです。釣り場が少ない、環境は悪くなるばかり、魚はいない。メーカーの方、業者の方、ショップの方、あなたがたは釣り場環境に対して何かをやっていますかと私は聞きたい。スクールでいくらうまくなったって、はいありがとうございましたで、おしまいでしょう。もっと釣り場作りの根っこの部分をやらないと、フライフィッシングの未来を語っても、なかなかしんどいんじゃないかと思います。
清水 メーカーそれぞれの規模で、できる範囲からやるということだろうね。
会場から そういえば昨日、杉坂さんの呼びかけで10人くらい集まって、釣りをする前に本栖湖の清掃をしてきました。
清水 おお。杉坂のアニキみたいな立場だったら、そういうことをもっと世間にアピールするべきじゃないの。
杉坂 いや、わざとらしいって言われるし(笑)。実は雑誌社にも来るなって言ったんだ。ぼくはただ、あんなきれいな湖なんだから、汚いのいやだと思っただけで。それで漁協に許可をとって、ゴミ拾いしたの。
会場から わざとらしくゴミ拾いすると、たしかにやっかまれるってのはある。でもそれを覚悟でやってアピールする時期にきてるんじゃないかと思うんです。業界としてもっと推奨すれば、フライフィッシングのイメージもあがるし、ああフライフィッシングって楽しそうだな、と思ってくれる人もいると思うんです。
清水 雑誌社や大きなメーカーが音頭をとって、足並みそろえてやっていったほうがいい。そうでないと、フライフィッシングに明日はないよ。
会場から 魚がいないと釣りもできないですよ。魚がいないようにしたりゴミを捨てるのは釣り人なんですから。

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