単行本『釣魚大全第二部』171ページ「第一〇章 コットンの鱒料理」より

 釣師 これはもうお帰りでしたか。ぼくよりちょっと早かったですね。ちょうどお迎えに出ようとしていたところですよ。
 旅人 それはよかった。あなたの手間を省いたというわけですね。
 釣師 それで、釣りはどうでした。
 旅人 すぐにごらんに入れますよ。さあ、どうぞ。型揃いで三つがいですぞ[原注]。なかでも一匹は私がこれまでにフライで釣ったうち二番目に大きな鱒です。しかも、これよりも大きなのに逃げられてしまいましてね。そのうえ、毛鉤までも。さらにほら、グレーリングが三尾。そのうちの一匹なんか、昨日私が釣ったのより数インチも大きいグレーリングですよ。昨日のだって悪くはなかったんですがね。
 釣師 これは見事な朝の一仕事でしたね。さて、われわれのダヴ川をどう思われますかな。
 旅人 イングランド最高の鱒の川だと思いますよ。まったくこの川が気に入ってしまいました。もしこの川が独り占めにできるのなら、流域一帯の土地を全部やるといわれても、交換してこの川と別れるのはまっぴらご免ですな。
 釣師 ああ、この川に対するその賛辞、あなたが釣りの真の愛好家であることがわかりますよ。それでと言ってはなんですが、今朝あなたをおひとりにしたご無礼の償いに、昼食にはぼくがこの魚を料理してさしあげましょう。どうぞ、居間の窓際にある本でも見ていてください。すぐに用意しますから。
 旅人 では、そうさせていただきましょう。

 釣師 どうです。速かったでしょう。
 旅人 いやまったく。ほう、これはうまそうだ。さっそくいただきましょう。
 釣師 さあどうぞ。いかがですか、料理の腕は合格ですかな。
 旅人 いや、これはすばらしい。こんなにうまい魚は食べたことがありませんよ。これまで食べたどんな鱒よりもずっとうまいですね。ロンドンあたりの鱒とは全然違う。
 釣師 今が鱒の旬だったら本当に言われるとおりなんですがね。ひとつこのグレーリングのほうを食べてみてください。はるかにうまいはずですよ。
 旅人 全くそのとおりですな。ところでひとつ、お願いですが。どうでしょう、鱒とグレーリングの釣り方を教えてくださったように、今度はこの料理の仕方を教えていただけませんか。あなたのやり方は、これはもう間違いなく、他のどんなのよりすばらしいですからね。
 釣師 それはもう喜んで。料理法が知りたくなるくらい喜んでいただけるなんて、うれしいですね。そのつくり方はこんな具合です。

 鱒を水洗いして、きれいなナプキンで水気をとる。腹を開いてワタと血をとり、なかをきれいにぬぐう。ただし、魚を洗ってはならない。片側だけ三か所に骨まで届く切れ目を入れる。次に空の鍋に、古くなって酸味の出たビール(ただし完全に気の抜けたビールではない)と酢と白ワインを少々、それに水を魚が隠れるくらいそそぐ。そこに塩を充分量、レモンの皮一個分、ホースラディシュの根のスライスをひとつかみ、およびローズマリー、タイム、ウインターセイバリーを一束にして入れる。次にその鍋を木を燃やした強火にかけて沸騰させ、そして魚を入れる。魚が多い場合は、一度に入れて煮汁の温度を下げることのないよう注意しなければならない。魚が沸騰している間に、煮汁を杓子に一、二杯とって、それにソース用のバターを入れてかき混ぜておく。充分に煮立ったところで煮汁を捨て、魚を取り出して皿に移し、バターソースをかける。その上からホースラディッシュを削いでたっぷりとふりかけ、さらにたたいた生姜を少々かける。周囲を付けあわせで飾り、魚の上にスライスしたレモンを一、二枚あしらってできあがりです[*1]。
 グレーリングもまったく同じ仕方で料理することができます。ただこの魚は、うろこをとるところが鱒とは違っております。それは自分の爪で落とすか、ナイフで軽く、魚に傷をつけないよう充分に注意してうろこを落としてやるのです。さらに注意すべき点は、この種の魚は、それもことに鱒の場合は、釣りあげてから四、五時間のうちに食べるのでなければ、まるで価値がないということです。
 さて、食事を終えられたところで、よろしかったら、またあの小屋まで歩いて、そこで今度は底釣りについて話すことにしましょう。


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