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「丹沢物語」目次
丹沢物語
春風ヤマメ
ビッグセッジ
Sの夏休み
解禁日探検隊、出動
大ヤマメのいる川
幻の谷
玄倉の蛙
泥酔の夜
オーパーツ
ユーシンの冬
怪飛行物体に遭遇す
夏の日の小さな嵐
魚止め
月の川
忠類川サケ釣り紀行
里川へ
秘密のヤマメ・ダービー
住みこみ校長
ツバメ
雨のち晴れ
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… 突然、耳元で川の音が炸裂した。釣りをしているときは忘れていたが、改めて川に注意を向けると、それは思っていたよりもはるかに強い音をたてて流れていた。見ると、ビッグセッジが風に吹かれてピラピラしていた。ヤマメをバラシたにも関わらず、なんだか楽しそうだった。リーダーをたぐると、テールのファーを激しくフレアーさせたビッグセッジが、風に吹かれているせいとばかりはいえない感じで、空中を行ったり来たりした。…「ビッグセッジ」
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… 麦藁帽子の隙間から、そっとその人を見た。静かだけれど、熱心にウキを見つめていた。陽に焼けた顔と、丸い麦藁帽子。夏草に覆われた川をわたる風が、ぼくの鼻孔をくすぐっていた。Iも気になるらしく、ときどきその人を見ていた。
…間をおかず女性の声がした。
「でもナマズって見かけは悪いけど、食べると美味しいのよ。わたし、大好き」
対岸にいるとばかり思っていたあの人が来ており、タモに納まって体を丸めている黒い塊を大切そうに眺めていた。…「夏の日の小さな嵐」
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… 「何ヶ月も前から計画する釣りもいいけど、今日みたいな急な釣りもいいっしょ」
とTが開口いちばんに言った。
彼は人が良さそうに笑いながら、私に独善を押しつけているのだが、実を言うと、私はこのような突然の釣りが嫌いではなかった。海を泳ぎつづけて疲れているところに、突然に空から降ってくる浮き袋のような気がするのである。
「どこから電話したの」
Tは二○メートルくらい先にある清涼飲料水の自動販売機を指さして言った。
「あそこ」
「コーヒー飲みながら電話したんだ」
「あたり」
「呆れたやつだなあ。人の都合は考えないんだ」
「考えたから誘ったっしょ」
とTは言ってニヤニヤした。… 「雨のち晴れ」
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