洞爺湖ビジターセンターの夏休み企画は教育に悪い。

【洞爺湖】週末レジャーに「特定外来生物駆除」はいかが―。

胆振管内洞爺湖町洞爺湖温泉の洞爺湖ビジターセンター・火山科学館は、夏観光の新機軸で毎週土日と祝日に「ウチダザリガニ駆除体験」を始め、夏休みの親子などに利用を呼び掛けている。

…今回は、湖の貴重な生態系を守る活動を体験型観光に組み合わせる試みで、同センターは「生態系保護を掲げて定期開催する観光メニューは道内でも初めてでは」と話す。

 …洞爺湖の駆除はその場で体をちぎって廃棄するルールだ。同センターは「誰かが安易に外来生物を持ち込んだ結果が、こんな残酷な作業につながることを、参加者に知ってもらいたい」。

 参加料は1人300円で10月26日まで。(北海道新聞 07/23 17:00

ウチダザリガニを食用として日本国内へ広めたのは当時の農林省だ。「誰かが安易に」持ち込んだという表現はウチダザリガニにはあてはまらない。いまもむかしも水産生物の増殖は水産業の王道である。

夏休みの親子からカネをとって、生物を〈その場で体をちぎって廃棄〉させることを観光の目玉にしようというのが、今回の洞爺湖ビジターセンターの企画だ。

どう考えても、教育に悪い。

大人の指示通りに生き物を選別して引きちぎり、その場に棄てる子どもが、いのちと自然の大切さを知るだろうか。企画そのものに大いに問題がある。

ふだん生物多様性がだいじと騒いでいる科学者さん連中が、こういう案件にたいしては、かならず見て見ぬふりをするのは、いつも通りのようである。

在来種/外来種という区別は、その時代の政治に左右されるあいまいな概念だ。人間と自然との調和を科学するのが、生物多様性の大命題である。外来種を排斥する生物多様性原理主義は、不変の正義ではない。

中立の立場からの科学的見地を提示するべきを、むしろ政治や権力側のご都合主義にお墨付きを与え、虎の衣をまとうのに躍起となっている「専門家」が多い。もっともそのような構図は自然科学分野だけではないようではある。

あと、道新の脳天気でなんにも自分で調べもせず、いっさい自分の頭でものを考えていない書きっぷりには、腹立たしさを通り越して呆れてものが言えない。

なにが「週末レジャーに特定外来生物駆除はいかが―。」だろう。

批判精神のない新聞ジャーナリズムならつぶれていいと個人的には思う。

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魔魚狩り ブラックバスはなぜ殺されるのか 水口憲哉(著)|ブラックバスは、濡れ衣だ! 異色のベストセラー  2005年3月10日 第3刷
桜鱒の棲む川 水口憲哉(2010)
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『淡水魚の放射能 川と湖の魚たちにいま何が起きているのか』(水口憲哉=著/フライの雑誌社刊)
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